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  • Harm van den Dorpel, Nethermind Quilt, 2025, Plotter drawing based on an output of the Quantizer algorithm, Ink on watercolour paper, Drawing size (H) 84.0 x (W) 84.0 cm, ©︎ Harm van den Dorpel, Courtesy of Upstream Gallery Amsterdam and Takuro Someya Contemporary Art, Photo by Shu Nakagawa

  • Harm van den Dorpel, Nethermind, 2025, Plotter drawing based on an output of the Quantizer algorithm, Ink on watercolour paper, Drawing size (H) 105.0 x (W) 84.0 cm, ©︎ Harm van den Dorpel, Courtesy of Upstream Gallery Amsterdam and Takuro Someya Contemporary Art, Photo by Shu Nakagawa

  • Harm van den Dorpel, Beads, 2025, Hand-coloured plotter drawing, based on the work Anni, Ink and pencil on watercolour paper, Drawing size (H) 81.0 x (W) 56.2 cm, ©︎ Harm van den Dorpel, Courtesy of Upstream Gallery Amsterdam and Takuro Someya Contemporary Art, Photo by Shu Nakagawa

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ハーム・ファン・デン・ドーペル | Cloud Writings

14 February - 21 March, 2026

Venue : Takuro Someya Contemporary Art

Takuro Someya Contemporary Artは、ハーム・ファン・デン・ドーペルによる個展「Cloud Writings」を開催いたします。

当ギャラリーとしては初の個展開催となり、国内初公開となる新作を含む作品群を展示します。本展では、ジェネラティブアートの実践を続けてきたファン・デン・ドーペルが、20世紀後半にミニマリズムやコンセプチュアル・アートで活躍した女性作家たちの思考を手がかりに、独自に展開したアルゴリズム描画を紹介します。

 

 

「Cloud Writings」

 

 個展「Cloud Writings」では、私に影響を与えたものに立ち戻り敬意を払う試みとして、ジェネラティブアート*における自身のルーツを探求する過程で生まれた作品を展示しています。

2019年以来、私はアニ・アルバース、ヴェラ・モルナール、シャルロッテ・ポゼネンスケといったアーティストの研究に専念してきました。これらのアーティストは、現代のコンピューターが発明される以前から二次元のグリッドを用いた作品を制作するという体系的なアプローチで知られています。

私はこのような歴史的なアルゴリズムを着想源とした現代的なアルゴリズムを開発しました。この方法論を「アルゴリズム考古学(algorithmic archeology)」と呼んでいます。そして、これらのアルゴリズムを用いてプロットマシンに指示を与えるコンピュータープログラムを考案しました。プロッターは、ペンやマーカーを紙の上でX−Y軸に沿って動かすことで精密な技術図面や建築図面を作成する特殊な機械装置です。プリンターがインクを左から右、上から下へと線状に塗布するのとは異なり、プロッターはあらゆる方向に線を描きます。このプロセスにより、ドローイングにはデジタルプリントの精密さを超えた有機的な質感が生まれます。プロッターはあらゆる方向に線を描き、そのゆっくりとした機械的な動きによって唯一無二で再現不可な結果を生み出し、私のデジタル作品に人間的で予測不可能な物質性をもたらします。

私のドローイング作品は、行と列という繰り返される要素から成る二次元グリッド構造によって構成されています。これらは文字を書くプロセスと織物を織るプロセスを表しており、そのデザインは宗教的・紋章的なイメージに触れています。いくつかのドローイングへは部分的に直接手を加えていますが、その作業は私にとって瞑想のような豊かな時間をもたらす取り組みでした。

紙に描かれた作品に加え、ドローイングを生成したアルゴリズムの内部構造を可視化する、複数のデジタル作品を設置しています。これにより、鑑賞者は物理的な作品が生まれた、潜在的に無限の可能性を体験できるでしょう。

*コンピューターで動作するアルゴリズムによって生成されるアート作品

 

ハーム・ファン・デン・ドーペル

日本語訳:ベンジャー桂

 

 

 

 

ハーム・ファン・デン・ドーペルは、遺伝学からブロックチェーンまで、幅広い知識と技術を駆使しカスタムコード化されたプログラムを用いて、スクリーン上に湧き上がるパターン化したイメージの中に、新たな美的可能性を見出してきました。反復的なキャリブレーションやフィードバックループを通して、私たちのデジタル体験に潜在的な感覚を呼び覚ます彼のイメージは、データがどのように構図へ組み込まれ、他要素との関係の中でどのように抽象化されていくのかを静かに考察する、示唆的でオープンエンドな鑑賞のあり方を模索しています。本展では、コードが展開する物質的な出来事——紙のテキスチャーに対するインクのにじみや筆圧の痕跡——に焦点をあて、点・線・筆致がどのようにデータの構造を可視化し、可読性へと変換していくかを示していきます。

本展の中心となる「Cloud Writings」(2024年–)は、作家が独自に設計したアルゴリズムを搭載した二軸プロッターが、水彩紙の上に精密な点や線を規則的に重ねていくドローイングシリーズです。光のピクセルを物質化したかのように、ここでは様々な色の顔料が細密な線の交差や斜格子となって、液晶画面のマットな質感を思わせる画面を生み出します。印象派が行った、分割された色が目の中で混ざり合う現象に呼応するように、線や点の集積が色を視覚的に融合させ、そこに漂う光と空気の印象を立ち上げる——それは、アルゴリズムが出力する像であると同時に、光のあり方を探る実践でもあります。コードが描線の順序や間隔を規定する一方で、紙の上のインクの予測不可能な偶然性は、それぞれのドローイングに固有の「記述」となります。その結果、プロッターによる動きが、コードの「演奏(パフォーマンス)」となって、一定の規律を保ちながら、わずかな圧の差や摩擦が積み重なり、触覚的な質感となって現れています。

《Leaky Abstraction》(2025年)と題したアニ・アルバースのパターン構造を参照する作品では、織物とコーディングの関係を深めるアーティストの技法をさらに拡張しています。アルバースの織物にみられる幾何学的ロジック——メアンダー柄の反復、段階的な斜線、縦糸・横糸のずれや意図的な破綻——を分析し、パターンの構成単位がどのように結合・逸脱・再整列するかのルールセットを導き出します。どのようなプログラミングの抽象化も実際の複雑さを完全に包摂できないとする「漏れのある抽象化の法則」に倣い、位相のずれやわずかなジッターなどの「漏れ」が表面化するように、生成アルゴリズムにあらかじめコンパイルされています。作成したファイルはサクラ社製の顔料ペンを装着したプロッターで実行され、何千もの短いストロークが重ねられ、空間の奥行きとモアレを形成します。離れて見ると、画像は鮮明な幾何学模様として立ち現れ、間近で見ると、密集したストローク——コードによって生成された縦糸/横糸の格子模様——が立ち上がり、構造そのものがイメージと触感を生み出すアルバースの織物に対する、アルゴリズムを用いた再解釈として提示されています。

水彩紙の上を筆ペンを装着したプロッターが走るドローイング作品(《Bamboo》(2025年)や《Bones》(2024年)など)では、コードを書の領域へと踏み込みます。これらの作品では、規則に基づく格子やメアンダー柄が単一ストロークの連なりとして構成され、プロッターは筆ペンを持ち上げては着地させ、波型の縁取り、段状の対角線、網目状の交差を描くことで、厚み、重なり、そしてわずかな抵抗が触覚的なテクスチャとして刻まれます。文書や作品に所有者が印を残す古代中国の慣習を取り入れ、刻印された所有権の連鎖をブロックチェーンにおけるプロヴァナンス(来歴情報)の考えに結び付けています。陰陽の区別を反映する2種類の印章が作成され、参照したエディション作品には作家印が押されたこのシリーズでは、作者性、記号、物質的な記述が交差し、アルゴリズムによる手続きが筆致を伴うイメージを生み出し、印章によってその社会的な生が担保されているのです。

印象派の光学的探究から、バウハウスにおける織物のスタディ、初期のアルゴリズム・アートに至る系譜の中に位置づけられる本展は、理知的な体系に基づく作品制作を知覚の問題として捉え直しています。そこでは、論理が制作におけるあらゆる決定を構造化し、抽象は「組織化された知覚」として立ち現れます。コーディングは方法となり、手続きが目に読み取れる物質的な決定へと変換され、間隔、密度、リズムが紙の表面に浮かび上がります。ルールは感性を閉ざすことなく輪郭を与え、ペン先、紙肌、プロッターの速度といった偶然性により、概念だけでは捉えきれない表現が露わになります。鑑賞者が最終的に向き合うのは、「つくることを通じて思考する」というアーティストの姿勢であり、そこで導かれる「見る」という行為──その視覚体験こそが、こんにちの抽象表現の射程と意味を問い直す営みとなるのです。

 

Takuro Someya Contemporary Art

 

 

 

 

ハーム・ファン・デン・ドーペル

1981年オランダ、ザーンダム生まれ。現在はベルリンを拠点に彫刻、コラージュ、コンピューター・アニメーション、コンピューター・グラフィックス、インタラクション・デザインなど多岐にわたる表現活動を行う。2015年には、ブロックチェーン技術を用いダウンロード可能なエディション作品を発表するオンライン・プラットフォーム「left gallery」を共同設立。同年、オーストリア応用美術博物館 MAK(ウィーン、オーストリア)がスクリーンセーバー作品《Event Listeners》を購入し、ビットコインによって取得した世界初の美術館収蔵作品となった。主な展覧会に、UCCA Center for Contemporary Art(北京、中国、2014年)、ZKM(カールスルーエ、ドイツ、2015年)、ワルシャワ近代美術館(ポーランド、2017年)、国立現代美術館ソウル館 MMCA(ソウル、韓国、2019年)など。作品はステデリック美術館(アムステルダム、オランダ)、KADIST財団(パリ、フランス)をはじめ、世界各地の公共・私的コレクションに収蔵されている。

 

[展覧会概要]

ハーム・ファン・デン・ドーペル|Cloud Writings

会期:2026年2月14日(土) ~ 2026年3月21日(土)
レセプション:2月14日(土)15:00 – 18:00
開廊:火〜土 11:00 – 18:00
休廊:日曜・月曜・祝日
会場:Takuro Someya Contemporary Art
〒140-0002 東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex I 3F TSCA
tel 03-6712-9887 |fax 03-4578-0318 |e-mail gallery@tsca.jp

 

協力:Upstream Gallery Amsterdam

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