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Past Exhibition

鈴木基真|wall, roof, window

11 June - 9 July, 2016

Venue : Takuro Someya Contemporary Art

  • “Ghost#2,” 2016, Lightbox with color transparency, Edition of 5 + AP, H 61 x W 121.5 cm

  • “half structures #1,” White House With A Red Mailbox, 2016, Acrylic on camphor wood, H 31.5 x W 44.5 x D 29 cm

このたびTakuro Someya Contemporary Artでは、彫刻家である鈴木基真の個展を開催いたします。TSCAでは4年ぶり3回目となる鈴木が彫り進めた境地を是非ご高覧ください。鈴木基真は1981年生まれ、2004年の武蔵野美大彫刻科を卒業し、独自のスケール感をもった木彫作品とその作品群を用いた展示法で注目を集めてきました。

鈴木は幼少より親しんだアメリカ映画の影響を強く受け、その視覚性を木彫に自在に活用しています。鈴木の木彫は独特のスケール感を持っていますが、それはジオラマやミニチュアといった縮尺模型とは異なります。鈴木は、映画のなかのあるワンショットのようなイメージを発端にして、壁→屋根→窓と形を連ねるようにして小さな世界を立像化しています。これをためしに新たな概念として「風景彫刻」と呼んでみます。英訳するとすれば、Landscape Sculpture ではなく”Scene Sculpture”となるでしょう。この風景彫刻の造形には、映像的なズームアップ/バックによる縮小/拡大のスケール操作と、カメラ位置からの距離感とパースの変化をともなって、カメラ特有の光学的歪みを含んでいるのです。

通常、私たちが見ている世界には、ビューポイントがあって、そこからの距離や光学的歪みが含まれており、それが人体との対比関係のなかでスケール感を生み出します。そして、風景は視点の移動にともなって大きく変化するのです。しかし、彼の風景彫刻はそれとは異なり、その作品に対峙した私たちが接近するにかまわずそこに静かに木彫として佇み、細部を眺めることすらできるのです。つまり、風景の光学的歪みを造形に含みながらも、鑑賞の位置によって変化することがない。これが不思議なスケール感を生み出すのです。風景彫刻は、均質な縮尺模型の眺望とは決定的に異なる、鈴木特有の、彫刻とイメージの結束を示しているのです。また、鈴木の木彫には着彩がなされており、その点においてもイメージへのつながりが意識されています。とくに近作では、彫刻で光と闇を表現するために色を巧みに用いて、光のイメージをシャープな彫像で具現化することに成功しています

本展では、こうした鈴木の風景彫刻をさらに展開させています。新作の壁掛けの彫刻と、彫刻をイメージへと転化させた写真作品をライトボックスの大作として共に発表します。壁掛けの彫刻では、鑑賞者の視点を絞りながら、独自のスケール感をより鮮明にするよう試みています。また写真作品では、自身の彫刻を被写体にして、イマジナリーな風景を生み出すのです。鈴木は、作品を撮影することをとおして、レンズ越しに見える世界のスケールをより自在に操作し、そのイメージをいくらでも複製可能にすることによって、記憶のなかの風景の印象からさらに自由になったと感じています。本展では、鈴木の彫刻のさらなる進展をご覧いただけることでしょう。鈴木の風景彫刻とは、イメージと彫刻の間を揺れる現代の新しい作品様態であり、映像的風景の印象に浸透した彼の知覚だからこそ、刻むことのできる像なのです。

 

開催期間:2016年6月11日 – 7月9日

開廊:火曜 – 土曜 12:00 – 19:00(休廊 日曜・月曜・祝日)

オープニングレセプション:6月11日(土) 18時 – 20時

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