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Past Exhibition

大塚聡|波をかぞえる

27 May - 24 June, 2006

Venue : TSCA Kashiwa

    1970年生まれの大塚聡は、グレイグラスやハーフミラー、鏡そしてその中に無数のLEDを埋め込み積層して個体化する作品で特に注目され、若手でも難解なマテリアルをコントロールできる貴重な存在となっています。

    一枚の透きとおる石版の中に、まるで結晶化するLEDの光点は、それぞれが素材同士の間隙で「合わせ鏡の効果」による無限の奥行きを伴う光線となって、呼吸するように明滅を繰り返します。その様相は「硬質で精緻な佇まい」と「深みへと続く静寂とした海面」の対比を垣間みるかのようです。

    1995年より制作をはじめ、1998年からドイツを中心に、ベルギー、リトアニア、スイスといった国際的な活動を継続的に展開。2002年に大胆で洗練された展覧会として話題を呼んだ、千葉市美術館での逢坂卓郎、須田悦弘、渡辺好明らとの4人展「THE ESSENTIAL」では、すでに模索が始まっていた一連のグラスワークのバリエーションを発表し、インナーリフレクションを外部化する完成度の高い作品を見せました。

    さらに2003年から2004年にわたって財団法人ポ−ラ美術振興財団のグラントを受けたベルリン滞在中に、セントエリザベス教会において「Untitled(Mirage)」と題した、逢阪卓郎との大規模インスタレーションで、映像のエレメントを抽出してみせるハーフミラーの大作を発表し話題となり、ドイツ国内のみならず日本でも高い評価を受けました。

    大塚の言及するところでは、作品が見るものに韻文的に受け取られることも意識しており、「poeticality(詩性)poeticism(詩的語法)poetics(詩学、詩論)」の同質異像として形成されているとも考えられます。

    詩歌の持つシンプルでフラックスな知性が、硬質なマテリアル上で共存する状態は、物理学でいう「流束(Flux)」という言葉で形容することもできます。それは大塚の作品において、私達を取巻くあらゆる現実と環境の可視・不可視の界面が可塑的にベクトルを付与された流束となり、一つの動的な詩性として感じられるインターフェースをもたらしているとも言えます。

    本展では一連の制作と活動の集大成ともなる、「波」をモチーフにした2ピースで総重量214キロにもなる光の新作を、タレル、ホルツァー、逢坂、宮島らの作品制作の協力を手がけてきた工房に依頼。それを中心としてサイトスペシフィックな構成を披露いたします。

    その作品は水面のようでもあり、かつちりばめられた光点が深みへ向かう明滅は、平面的な物理感を超えて空間に深遠とした印象をもって鑑賞者へ語りかけるでしょう。

    その他、作家が海外を中心に収集した骨董写真を応用した作品や、ドイツ滞在中に制作された映像をもとにした試みもご紹介します。

    Artist Profile

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