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Past Exhibition

大山エンリコイサム|Epiphany

15 October - 12 November, 2022

Venue : Takuro Someya Contemporary Art

  • Enrico Isamu Oyama, “FFIGURATI #406 – The Grape Eaters,” 2022, Acrylic on printed image, 23.3 x 15.8 cm, each / a set of 23

  • Enrico Isamu Oyama, “FFIGURATI #407 – The Vision of St. Bernard,” 2022, Acrylic on printed image, 23.3 x 15.8 cm, each / a set of 23

  • Installation view, photo by Shu Nakagawa.

  • Installation view, photo by Shu Nakagawa.

  • Installation view, photo by Shu Nakagawa.

  • Installation view, photo by Shu Nakagawa.

  • Installation view, photo by Shu Nakagawa.

  • Installation view, photo by Shu Nakagawa.

  • Installation view, photo by Shu Nakagawa.

Takuro Someya Contemporary Artでは、4年ぶりとなる大山エンリコイサムの個展「Epiphany」を開催いたします。大山は1983年に生まれ、現在はニューヨークと出身地である東京を拠点に美術家として制作を行うほか、エアロゾル・ライティング文化を体系的に論じた主著『アゲインスト・リテラシー―グラフィティ文化論』(2015年、LIXIL出版)などの執筆でも知られています。

  大山の代名詞は「クイックターン・ストラクチャー(QTS)」と名付けられたモティーフであり、これはストリートアーティストが名前の造形を通して自身のアイデンティティを示すときのレター(字形)から文字を取り除くことで線の運動にまで解体し、それを抽象的なかたちに再構成した作家独自の概念です。大山にとってQTSは「世界と関わるための手段」であり、かかれる「場」あるいはそれを取り巻く諸条件との相互作用から生成されます。大山は店舗内外の壁面にQTSをかいたJINS原宿店などのコミッションワークも手掛けていますが、立体的なモノトーンの形体がスクラップアンドビルドをくりかえす都市に呼応するさまは、モティーフがそれ自体の生を拡張していくかのようです。

  本展「Epiphany」では、大山が2012年の渡米後まもなくして制作を始めた「Found Object」シリーズの23点組最新作を中心に展示します。「epiphany」はキリスト教の語彙として「啓示」を意味するほか、日常的には「ひらめき」や「気づき」と訳されます。最新作のベースは、ムリーリョ、シャルダン、ジョットといった西洋美術史上の芸術家の作品イメージが刷られた版画で、英国オックスフォードの古道具屋で手にしたそれらに、大山は、みずからのQTSを差し込むことで対話を試みています。

  通常のエアロゾル・ライティングが支持体となる場の文脈や構成を無視してかかれるのに対し、本シリーズの特徴は、もとのイメージの構成に応答するようにQTSが描画されていることです。17世紀スペインの画家ムリーリョの絵画《葡萄とメロンを食べる少年たち》*(版画上の表記名は《The Grape Eaters》)を用いた作品では、QTSが閃光のように右上から左下に駆け抜けることで、ふたりの少年のあいだに交わされる視線、表情、しなやかな身体を強調し、画面に生き生きとした動きを与えています。「Found Object」という呼称やその手法は、シュルレアリストやダダイストの「ファウンド・オブジェ」や、マルセル・デュシャンの「レディ・メイド」を連想させますが、デュシャンが日常的なオブジェを異なる文脈でまったく別の物として提示したのに対し、大山の制作は、見出した対象それ自体に備わった性質を引出し、活性化する点で、別のアプローチだと言えるでしょう。

  本シリーズはまた、刷られたイメージだけでなく、印刷物というオブジェクトに対する時間的な介在でもあります。《葡萄とメロンを食べる少年たち》は17世紀にスペインで制作されましたが、本シリーズに用いられたのは、19世紀の英国でそのイメージを印刷した版画です。イメージの有名性に比して、オブジェクトそのものは「美術史上の絵画作品を複製した無名の印刷物」にすぎません。大山の仕事は、こうした埋没したオブジェクトに光を当て、現代美術というアクティブな産業構造のなかで新たな美学的、経済的価値をもたらそうとしています。

  さらに大山は、本シリーズ、とりわけ本展で発表される最新作において、QTSの介在を「過去のモーメントとの共振」と表現しています。この「モーメント」とは、これらの絵画が生み出された際に、画家が芸術的な「啓示(epiphany)」を授かった瞬間を指しており、大山はQTSによる働きかけによって時間を縦断し、そうした芸術史上に点在する創造の起点へと、想像的にアクセスすることを試みています。その結果、大山の「啓示(epiphany)」の所産であるQTSと、歴史的な絵画のイメージが相互に作用し、その鋭くも有機的なリズムは、作家の手を離れてもなお形而上的な運動を続けるかのようです。

  私たちは、これらの作品からどのような「epiphany」を受け取ることができるでしょうか。大山エンリコイサムの代表的な作品シリーズを、深化したコンセプトのもとで紹介する本展にぜひご期待ください。

 *1645年頃制作、アルテ・ピナコテーク(ミュンヘン)所蔵

 

 

[展覧会概要]

大山エンリコイサム|Epiphany

会期:1015日(土)〜1112日(土) 

開廊:火〜土 11:00 – 18:00

休廊:日曜・月曜・祝日

会場:Takuro Someya Contemporary Art

〒140-0002 東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex 3F TSCA

TEL 03-6712-9887 |FAX 03-4578-0318 |E-MAIL: gallery@tsca.jp

 

 

プロフィール:

1983年 東京生まれ。2007年 慶應義塾大学環境情報学部卒業。2009年 東京芸術大学美術研究科先端芸術表現専攻を修了。

エアロゾル・ライティングのヴィジュアルを再解釈したモティーフ「クイックターン・ストラクチャー」を起点にメディアを横断する表現を展開し、現代美術の領域で注目される。
2011−12年にアジアン・カルチュラル・カウンシルの招聘でニューヨークに滞在以降、ブルックリンにスタジオを構えて制作。
神奈川県民ホールギャラリー(神奈川)、藤沢市アートスペース(藤沢)、大和日英基金(ロンドン)、マリアンナ・キストラー・ビーチ美術館(カンザス)、ポーラ美術館(箱根)、中村キース・ヘリング美術館(山梨)、タワー49ギャラリー(ニューヨーク)などで個展を開催。
『アゲインスト・リテラシー』(LIXIL出版)、『ストリートアートの素顔』(青土社)、『ストリートの美術』(講談社)、『エアロゾルの意味論: ポストパンデミックの思想と芸術 粉川哲夫との対話』(青土社)などの著作を刊行。『美術手帖』2017年6月号を企画・監修したほか、コム デ ギャルソン、シュウ ウエムラ、JINS、アウディとのコラボレーションも手がける。2020年には東京にもスタジオを開設し、現在は二都市で制作を行なう。

 

 

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