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大山エンリコイサム|Abstractions / Extractions

19 October - 30 November, 2024

Venue : Takuro Someya Contemporary Art

  • Enrico Isamu Oyama, FFIGURATI #638, 2024, Aerosol paint, urethane paint, gesso, canvas, aluminum panel, (H)250 x (W)180 x (D)3.2 cm, Artwork ©︎Enrico Isamu Oyama / EIOS, Photo by Shu Nakagawa, Courtesy of Takuro Someya Contemporary Art and the artist

  • installation view, photo by Shu Nakagawa

  • installation view, photo by Shu Nakagawa

  • installation view, photo by Shu Nakagawa

  • installation view, photo by Shu Nakagawa

  • installation view, photo by Shu Nakagawa

  • installation view, photo by Shu Nakagawa

Takuro Someya Contemporary Artは、大山エンリコイサムによる個展「Abstractions / Extractions」を開催いたします。大山の制作における意味・文脈形成のハイブリッド性に迫る本展では、「extraction(抽出)」という概念を手がかりに、イメージの抽象化にともなう複雑な手続きを絵画作品を通して展覧します。

 

 

都市におけるマーキングと視覚伝達のエフェメラルな手段として、1970年代から80年代にかけてニューヨークで発展したエアロゾル・ライティングを拡張し、独自のモティーフ「クイックターン・ストラクチャー(QTS)」を通して多様なメディアでの制作に取り組んできた大山。その中心にある絵画作品では、エアロゾル塗料の多層的な使用により、幾何学的かつ流線的でもあるQTSの形体を起点に、身体の動きが空間と時間へ与えるはたらきを追求していきます。このように制作プロセスを持続的に編み直し、視覚のイディオムを構築していく様子は、さまざまな地理的・歴史的な時間軸に交渉する大山の思考に連動しています。

 

本展で大山は、抽象の性質そのものを問うように、「extraction(抽出)」の概念に焦点を当て、その実践の基盤をさらに掘り下げます。抽象がしばしば対象を形而上的に昇華させる一方で、「抽出」は、対象から引き出された要素が、もとの対象がもつ文脈を断片的に引き継ぎつつ、同時にそれを再編成し、新たな意味的連関に置き直します。それはまた、論文執筆において全体の大まかな要約を指すアブストラクトと、部分の正確な引用を指すエクストラクトの対比にも重なります。大山の絵画作品では、前景においてライティングの文字が要素に分解され、QTSに再構成されると同時に、後景においてはエアロゾル塗料とインク、スポンジやスクラブブラシなどの使用から曲線や層状のフォルムが描画されます。これらがマーキングの身体性を強調し、エアロゾル塗料やぼかしの行為が記述するレイヤーを隠しながら露出させ、抽象とジェスチャーの複雑な相互作用を提示するのです。

 

後景における強いインク表現は、視覚的には東洋のカリグラフィーを想起させるかもしれません。大山はこうした歴史的な連想をさらに先鋭化させ、書字一般のより身体的な根拠として「筆順」を挙げます。それは反復を可能にする型であり、繰り返される書字の運動はやがて字体を揺さぶり、解放された描線の映像的・聴覚的な広がりをもたらします。エアロゾル塗料の工業的マチエール、インクの書的・即興的なジェスチャー、そしてペインティングにおける抽象化の内省的なプロセスが、継続性と変化、自発性とコントロールのあいだを行き来し、作品に収束する多面的な対話を織りなします。そして、大山が探求する「抽出」という概念的なツールが、抽象の性質をよりグローバルな枠組みで捉え直し、さまざまな地理、文脈、そして学問としての領域に横たわる複数のモダニズム、複数の抽象の響き合いへと観客の省察を促していきます。

 

大山エンリコイサムによる個展「Abstractions / Extractions」は、2024年10月19日(土)から11月30日(土)まで開催。

 

Takuro Someya Contemporary Art

 

 

 

 

 

大山エンリコイサム Enrico Isamu Oyama


美術家。ストリートアートの一領域であるエアロゾル・ライティングのヴィジュアルを再解釈したモティーフ「クイックターン・ストラクチャー」を起点にメディアを横断する表現を展開。イタリア人の父と日本人の母のもと、1983年に東京で生まれ、同地に育つ。2007年に慶應義塾大学卒業、2009年に東京藝術大学大学院修了。2011-12年にアジアン・カルチュラル・カウンシルの招聘でニューヨークに滞在以降、ブルックリンにスタジオを構えて制作。これまでに大和日英基金(ロンドン)、マリアンナ・キストラー・ビーチ美術館(カンザス)、ポーラ美術館(箱根)、中村キース・ヘリング美術館(山梨)、タワー49ギャラリー(ニューヨーク)、神奈川県民ホールギャラリー、慶應義塾ミュージアム・コモンズ(東京)などで個展を開催。『アゲインスト・リテラシー』(LIXIL出版)、『ストリートアートの素顔』(青土社)、『ストリートの美術』(講談社)、『エアロゾルの意味論』(青土社)などの著作を刊行。『美術手帖』2017年6月号を企画・監修したほか、コム デ ギャルソン、シュウ ウエムラ、JINS、アウディなどの企業やブランドとコラボレーションを実施。大相撲令和4年1月場所では、横綱照ノ富士の「三つ揃え化粧廻し」にアートワークを提供し、話題となった。2023年3月に東京・天王洲で開催されたアートフェア「RE:FACTORY」ではアーティスティック・ディレクターを務め、多角的に仕事をする。2020年には東京にもスタジオを開設し、現在は二都市で制作を行なう。

www.enricoisamuoyama.net

 

 

 

 

 

 

[展覧会概要]


大山エンリコイサム|Abstractions / Extractions


会期:2024年10月19日(土)〜11月30日(土)
レセプション:10月19日(土)15:00〜18:00 ※作家在廊予定
開廊:火〜土 11:00 – 18:00
休廊:日曜・月曜・祝日 
会場:Takuro Someya Contemporary Art
〒140-0002 東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex I 3F TSCA
TEL 03-6712-9887 |FAX 03-4578-0318 |E-MAIL: gallery@tsca.jp
担当:河

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