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Past Exhibition

A Decade or So Ago・As Tears Go By | 岡﨑乾二郎

4 August - 29 August, 2020

Venue : Takuro Someya Contemporary Art

  • Installation view, photo by Shu Nakagawa

  • Installation view, photo by Shu Nakagawa

  • Installation view, photo by Shu Nakagawa


Takuro Someya Contemporary Artは、岡﨑乾二郎の個展「A Decade or So Ago・As Tears Go By」を開催いたします。この展覧会は、2010年までに制作された作品の中から、作家が特別な意味を感じ大切に保存してきた作品群を10数年ぶりに=関連性のある絵画から彫刻、タイル作品まで12点を一同に展示する貴重な機会となります。

10数年前の岡﨑の作品を通して、現在、私たちが置かれている困難な状況の意味を改めて考え直す、回顧から展望へ思考を転換するヒントを感じ取っていただけるのではと願っています。

 

この展覧会に際して、岡﨑によって書かれたテキスト「A Decade or So Ago・As Tears Go By」(後半に続きます。)も ご一読いたいただけましたら幸いです。

 

展覧会概要

「岡﨑乾二郎|A Decade or So Ago・As Tears Go By」

会期:2020年 8月4日(火)~8月29日(土)

夏季休廊:2020年8月9日(日)~8月17日(月)

休廊:日曜・月曜・祝日

開廊:火曜~土曜 12:00 – 18:00(*営業時間を短縮しております)

会場:Takuro Someya Contemporary Art

〒140-0002 東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex 3F TSCA

TEL 03-6712-9887 |FAX 03-4578-0318 |E-MAIL: gallery@tsca.jp

 

事前予約制

会期中事前予約制です。

お手数ですが、ご来廊希望日の前日18:00までにgallery@tsca.jp 宛に以下内容を記載のうえ、メールにてご連絡をお願いいたします。

・ご来廊希望日時

・お名前

・人数(5名まで、同時入場は3名まで)

・携帯番号

 

COVID-19感染拡大防止対策について

 

前回の展覧会から引き続き、開廊時間を短縮し、12:00~18:00オープンとさせていただきます。

感染拡大防止のため、以下のような対応をとっております。

 

*ご来場時はマスクの着用をお願いいたします。

*入り口にアルコールを設置し、入場および出場の際に手指の消毒をお願いしております。

*入場制限(同時入場は3名まで)を行なっております。

*以下の症状がある方はご来場をご遠慮くださいますようお願いいたします。

・37度以上の発熱がある

・風邪の症状(発熱、せき、くしゃみ、喉の痛みなど)がある

・強いだるさ(倦怠感)や息苦しさがある

・新型コロナウイルスと診断された、および診断された方と接触したことがある

・その他、体調に不安がある

*在廊するスタッフの検温や健康状態の確認を毎日実施し、勤務時にはマスクの着用など適切な感染防止策を徹底させていただいています。

*状況により事前予約のお断り、入場の中止、臨時休廊させていただく場合がございますが、ご理解ご協力のほど、よろしくお願いいたします。

 

A Decade or So AgoAs Tears Go By

 

岡﨑乾二郎

この十年が特別に長かったというわけではない。けれど、かつての昔は、この十年で現在への連続として遡れることのできる過去ではなくなってしまった。この十年が歴史に刻みこんでしまった溝は、千年の隔たりよりも深く、越えることの不可能な断絶かもしれない。

 わずか十年前の、けれど、もはや十年一昔ともいえない昔は、ゆえに何か完結したお伽話のようにも思い起こされる、あるいはそれをまだ忘れられない現在のわたしたちこそが今は昔のお伽話にすんでいるのかもしれない。

 *

 映画『ブレードランナー』に登場するレプリカントたちのもつ記憶も、すべてこのように複製された(お伽話のように反復された)記憶だった。彼らに新しい出来事は記憶されることはない、はずだった。けれど映画の終り、反乱したレプリカントのリーダーはその死の直前(レプリカントはわずか四年の寿命しかない)に、「I’ve seen things you people wouldn’t believe. …All those moments will be lost in time, like tears in rain. 」(わたしは人が信じることもできないようなものを見てきた。…そんなすべての出来事も時の中に消えていく、雨の中に流れる涙のように)と語る。レプリカントは彼の記憶するすべてが植え込まれた記憶(繰り返し)であることを知っているがゆえに、いま彼が目撃した事件の新しさ(誰も経験したことがない)を客観的に把握もできるのである。過去の記憶にしばられた人間たちは、その出来事の固有性を受け止めることも知覚することもできないだろうとも、彼は知っている。

 レプリカントの台詞は、ストーンズの名曲(またマリアンヌ・フェイスフルが歌った)〝As tears go by〟をも思い出させる。

 

お金をもっていても、なんでも買えるわけではない

こどもたちの歌を聞きたいけれど

聞こえるのは ただ

地面に 雨がふりつづく 音だけ

涙が流れるように、わたしは座って見ています

 

日が暮れている

わたしは座って見ています

こどもたちが遊んでいる

昔、わたしもしていたことをしています

みんなは それを新しいことだと 思っている

涙が流れるように、わたしは座って見ています

 

 大人になること(社会で地位をえること)は、こどものいた世界、その現実から遠ざかることだと、歌っているようにも見える。この曲を歌っていたとき、ストーンズのミックにしても、マリアンヌにしてもまだ二十代前半だったのだから、このかつてこどもだった時代は、わずか十年ほど前である。一方レプリカントの寿命はそもそも四年だった。いずれにしても、わずか十年未満で、もう決して戻ることのできない、決定的な経験をしてしまった、その自覚と喪失感が双方には示されている。ここで追憶されている経験は、この社会には決して記して残すことはできない性質のものであって、だからそれを記そうとすることもないだろう、そんな矜持が、どこにも回収されることのできない、その寂しさを裏打ちしてもいる。

十年前にどんなことを考えていたのか、感じていたのかを想い起すことは不可能である、その後に起こった様々な出来事を思えば、まだその困難に直面しないでいられる日常の穏やかさは羨ましい気持ちもするし、反対に、その後、起こることを知らないゆえの無防備さ、その磊落を気の毒にも思う。

けれど、本当に何も知らなかったのか、気づいていなかったのか、といえば、そうは思わない。二度とその時代が来ないことは知っていたし、それをうすうす気づきながら、何をしていいのか的確な行動を起こせない自分に無力を感じてもいたのである。そんな十一年前、ふうと出会った。彼女がすでに四年余りの(すでに波瀾万丈の困難な)生を過ごしてきていたのは確かに感じられた。彼女のもつ矜持にわれわれは打たれたのである。

久しぶりに十数年前の作品群を見なおして、こんな事を考えた。

 

岡﨑乾二郎は、1955年東京生まれ。1982年パリ・ビエンナーレ招聘以来、数多くの国際展に出品。総合地域づくりプロジェクト「灰塚アースワーク・プロジェクト」の企画制作、「なかつくに公園」(広島県庄原市)等のランドスケープデザイン、「ヴェネツィア・ビエンナーレ第8回建築展」(日本館ディレクター)、現代舞踊家トリシャ・ブラウンとのコラボレーションなど、つねに先鋭的な芸術活動を展開してきた。

東京都現代美術館(2009~2010年)における特集展示では、1980年代の立体作品から最新の絵画まで俯瞰。2014年のBankART1929「かたちの発語展」では、彫刻やタイルを中心に最新作を発表した。長年教育活動にも取り組んでおり、芸術の学校である四谷アート・ステュディウム(2002~2014年)を創設、ディレクターを務めた。2017年には豊田市美術館にて開催された『抽象の力―現実(concrete)展開する、抽象芸術の系譜』展の企画制作を行った。2019年ー2020年には同じく豊田市美術館にて全館を使って絵画、彫刻、レリーフなど、旧作から最新作までを展示し、これまでの活動を網羅した「視覚のカイソウ」が開催された。

主著に『抽象の力 近代芸術の解析』(亜紀書房 2018年)、『ルネサンス 経験の条件』(文春学藝ライブラリー、文藝春秋 2014年)、『芸術の設計―見る/作ることのアプリケーション』(フィルムアート社 2007年)。『ぽぱーぺ ぽぴぱっぷ』(絵本、谷川俊太郎との共著、クレヨンハウス 2004年)。

『抽象の力 近代芸術の解析』にて、平成30年度(第69回)芸術選奨文部科学大臣賞(評論等部門)受賞。

 

Artist Profile

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