Close
Past Exhibition

ラファエル・ローゼンダール|Somewhere

16 January - 13 February, 2016

Venue : Takuro Someya Contemporary Art

  • “Into Time 15 06 06,” 2015, Lenticular painting, Mounted and Framed, Unique, H 163 x W 123 x D 4 cm

  • “Into Time 15 05 02,” 2015, Lenticular painting, Mounted and Framed, Unique, H 163 x W 123 x D 4 cm

 

これまで主にニューメディアを扱ってきた作家らしく、ラファエル・ローゼンダールの素材や技法への取り組みは近年、多方面へ、特に伝統的な分野にまで及んでいます。それは、ローゼンダールを代表するウェブ作品や、プロジェクターを特有に使ったインスタレーションなどの、デジタルやインターネットに由来する作品の思想やヴィジョンを、日常の中にあるスタンドアローンの存在へ外部化する試みとも言えます。

 

そして支持体となっているレンチキュラーやタペストリーは、工業用素材や工芸品として私たちにとって身近である反面、レンチキュラーの仕組みがディスプレイに近く、彼の作品をこれまで空間へと映し出してきたデバイスのRGBを扱うモニターやプロジェクターと近い表面構造を持つ素材であったり、タペストリーにおいては作品制作にも使用されるジャカード織機がコンピューターの起源の一つとされ、織とプログラムが手触りのある色彩と形態のヴィジュアル化を実現する織物です。こうしたデジタル表現に無関係にみえる時代を遡るかのような探求や実践を通じてローゼンダールは、ネットアートの先駆者としてのルーツを昇華させ、自身のアイデンティティを技術や歴史の時系列へ自由に還流させています。

 

ローゼンダールの活動がみられはじめた2000年前後は、インターネットが広帯域化・無線化するなどして日常的に普及をみせはじめた時期で、代表作になっているウェブ作品の制作を重ねながらネットのアーキテクチャと柔軟性を自らのものとする中でネットワークをチューブ(洞窟)であると喩え、サーバーに設置するプログラムは壁画にも等しいプリミティブな行為であると捉えるなど、独自のマインドとスタイルを確立して注目を集めていきました。ラファエルの表現はインターネットを支持体にするようにはじまったため、常にカッティングエッジで未来志向を体現する存在として好感を抱かれてきたことは当然としても、還って作品から感じさせるのは、人間味溢れるユーモア、思考の明瞭さ、実態を伴う美しさです。

 

そしてその美しさが最も端的に表わされる作品が今回の個展で発表されるレンチキュラーペインティングです。この作品はプロジェクターと鏡を用いてきた彼のインスタレーションと共通するように光をダイナミックに反射する性質を持ち、発光するディスプレイでしか描き得なかったローゼンダールが好んで使用する特有の色彩や明暗のコントラスト、様々なパターン、動きとインタラクションがその基盤面へと定着した絵画へと飛躍しているといえるでしょう。その表面から立ち上がる光の反射過程により成立するイリュージョンは、騙し絵やオプ・アートに見られるイリュージョンとは違い、観者の視知覚の限度に頼るものではなく、メディウムであるレンチキュラー自体が光の中に宿る色を無限に解放させ、眼に見えるものにしています。

 

Into Time 15 05 02

Into Time 15 05 02

絵画が自己のイリュージョン性の限界から20世紀の抽象表現へ行き着き、リヒターによりシャイン(仮象)へ辿り着いたとして、ローゼンダールのようにデジタル表現の領域から、来世紀を向かえる絵画、あるいは彫刻や写真、または未だ見ぬ私たちのアートにとっての「これからの現実」が生まれてくることを期待してみてはどうでしょうか。本展を構成する6点のレンチキュラーペインティングは、観点によって移ろうイメージの本性をつかめないまま、いつまでも新鮮に見えると同時に、加速度的に変わり続ける風景の本質を反映しているといえます。形のあるものを見せることへの執着はなく、どこまでも自由で遊び心のあるローゼンダールの絵には絵画への一つの希望を見出せるように感じられるでしょう。

 

ラファエル・ローゼンダールは、1980年オランダ生まれのヴィジュアル・アーティストです。現在はニューヨークをベースにしつつ彼のインスタグラムにみられるように制作は世界中のあらゆる場所で続けています。ウェブ作品を2000年から発表し活動を続け、インスタレーション、レンチキュラー作品、ファブリック、詩作などの作品へとスタイルを広げています。近年の特徴的な展示や活動として、ニューヨークのTimes Square Allianceが、国際的に評価のある作家12名を毎月1名づつの企画として開催する、個展形式のパブリックアートプログラム《Times Square Midnight Moment》に2015年2月の1ヶ月間出展しタイムズスクエアのディスプレイ全体へウェブ作品を広げて話題になりました。なお、主なパブリックコレクションでは、ホイットニー美術館やオランダのブレダ市にあるミュージアム・オブ・ザ・イメージ(MOTI)に作品が収蔵されています。

 

 

ラファエル ローゼンダール  |  Somewhere

開催期間 2016年1月16日(土)― 2月13日(土)

開廊:火曜 – 土曜 12:00 – 19:00(休廊 日曜・月曜・祝日)

scroll to top